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Channel: 登山者はこうして遭難する~山岳遭難事例から学ぶ安全対策~
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軽量化についての考え方

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軽量化・・・今はかなり気を使い荷物はテント泊2泊3日でも14キロ以内に収めるよう工夫しています。これくらいの重さなら、衰えた今の私でもなんとか最大8時間ぐらいは歩けますので。

底なしに体力のあった学生時代は、荷物を軽くすることなど全く考えたことがありませんでした。大学ワンゲルは『重いザックを担げる奴がエライ』の世界でしたからむしろ重量化思想があり(笑)、今となっては懐かしい話ですが、合宿にウクレレギターやメンバーに振る舞うためのビール1ダースを持って行ったりしたものです。


雨の山

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自分も中年と言われる年代にさしかかり、登山の嗜好がかなり変わってきました。その最たるものが、樹林帯歩きや雨の日の山も好きになったということです。

20代の頃は樹林帯歩きなど岩場へのアプローチでしかなく、雨も苦痛以外の何者でもありませんでしたが、今では濡れた森の匂い・雨の音・独特の静けさに包まれていると、心の底から安らぎを感じます。もちろん土砂降りの悪天は今でもご免こうむりたいですが(笑)。

交通事故のリハビリに、日帰りでマイナー低山に出かけた日の感動は忘れられません。その日は雨が降っていたので最初から頂上を目指す気もなく、気の向くまま何度も大休止を取りつつ一人で歩きました。そして、そこで初めて雨の山の魅力を知りました。

もちろん、学生時代と違い、高性能の防水透湿性雨具やアンダーウェアなどの装備を揃えることができているのも大きいですが、雨の山を心から楽しめる自分が今います。

ヒザへの負担ということを考えれば、歩き主体の登山よりクライミングのほうが負担が少ないのですが、やはり年をとったということでしょう(笑)、岩場をガツガツ攀じるより、のんびりと樹林帯を歩くほうに魅力を感じている昨今です。

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「岳」というマンガ があります。

若くして世界の巨峰を登頂した後、ボランティアで山岳救助をする主人公・島崎三歩。彼を中心に山の美しさや厳しさ、人間模様を描いた作品です。映画化もされましたので、ご存じの方も多いのでは。

山岳物の漫画はたいてい登山の素人がろくな取材もせず描いているので、登山を知っている人間の目から見るとどうしようもない駄作ばかりですが・・・この岳は作者もクライミングをする人だけあり非常によくできています(映画版はクソでしたが)。

マンガにありがちな、人間離れした超人によるスーパーレスキューというものはなく、非常に現実的なストーリーで、山での悲惨な遭難現場も淡々と、かつ生々しく描写していいます。が、どこか温かみと救いのあるストーリー立て、数々の名セリフが胸に迫る秀作ですね。Amazonのカスタマーレビューでも高評価が並んでいます。

悲惨な現実をこれでもかとばかりに見せつけながらも、「やっぱり山っていいよなぁ」と感じさせてくれる作品、ただのマンガと侮る無かれ、ぜひ山を愛する多くの人に読んでもらいたいです。


食い延ばし

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滑落による怪我や道迷い遭難などで「動かないで救助を待つ」ことを選択した時、長期戦になることを覚悟し住環境を整えることがまず第一です。動ける範囲で最も安全なところへ移動し、手持ちの装備をフル動員してできる限り雨風をしのげる環境を整えます。

そしてひとまず落ち着いたら、次にするべきは食料計画を立てること。思考の手順を箇条書しますと・・・。

1.ザックの中の食料を全て広げる。
2.救助されるまでの日数を計算する。下山予定日はいつ、予備日はいつで、その翌日に捜索依頼が出てヘリが飛び発見されるとしたら、あと◯日はここで持久戦だな。
3.ということは、この食料と水であと◯日。1日分に食べるのはこれだけ、飲み水は◯CCだ。

と、こんな具合です。冬季のバリエーションルートを登るようなレベルになると、悪天に閉じ込められたりすることも稀にあるので、こういった「食い延ばし計画」は普通の思考過程なのですが、一般登山者の方にも参考になるのではと思います。

2010年にチリの鉱山で33人が生き埋めになった崩落事故は日本でも大きく報道されましたが、現場のリーダーも現状把握の後にしたことは、この食い延ばし計画だったそうです。

このように持久戦計画を立てていると、自然と腹も据わってきて精神的なパニック状態から回復できます。食い延ばし、ぜひ頭に入れておいてください。

大切なことは「こまめな現在地確認」と・・・

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昨年の警察庁の発表によると、道迷いが遭難原因のNo.1(滑落の2倍以上)となっているそうです。

道に迷っても、現在地が把握出来れば恐れることはありません。そしてそのために重要なのが、「こまめな現在地確認と記録」です。

私は山歩きでは、ウエストポーチに地図・コンパス・メモ用具を入れて、こまめに行動記録を取っています。小ピークや分岐点などを通過するときには必ず時間をメモ、1時間に1回の小休止の時は必ず地形図を開き現在地を確認。自分がどこをどのくらいのペースで歩いているのか、常に把握しています。

そうすれば「あれ?ルートを間違えたか」と思ったときにも、すぐに現在地を地形図から確認できます。

『さっき一本とったときはココにいた、あれから普段のペースで30分だから距離的にはこのくらい、今の周囲の地形がこうなっているということは、こっちのほうに来てしまったのか。いかん、戻らないと』。このように現在地確認ができれば、道迷い遭難の確率は格段に低くなります。

心理学の本を読んでいる時に「なるほど!」と思ったのですが、人が間違いを犯しつつあるときは、「自分の失敗を認めない」という心理が働くそうです。おかしいと思いつつも進んでしまうのも、こういう人間の持つプリミティブな(?)心理が働いてのことなのでしょう。

こまめに現在地確認をする、違和感を感じたらすぐに2万5千分の1地形図を広げ再び現在地確認をする、しからばそうそう道迷いに陥ることはないでしょう。濃霧に巻かれるなどで現在地がわからなくなる場合もありえますが、GPSが活躍するのはこういう時でしょうね。GPSは地図代わりに使うものではなく、「いざという時(=現在地を把握できなくなってしまったとき)に自分が今いる位置を把握するための道具」という意識で携行するのがいいかと思います。

Em-Shelter I/ エム・シェルター

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ツエルト泊に関しては、自分で言うのもなんですが、私はかなり経験値が高いです。若かりし日々、アルパインクライミングをしていた頃は厳冬期でも普通に半雪洞のツエルト泊をしていましたし、1人で北米クライミングツアーをしたときは3ヶ月間ツエルト泊まりでした。テントを買う金もモーテルに泊まる金も無かった・・・という裏事情はありますが(笑)。

よって、どんなに天候が荒れようと、ツエルトでの避難体勢を整えるのはお手の物。「ザックを地面に敷いて座る→ザックの雨蓋からツエルトをかぶりながら引き出す→生地を足元にたくし込む→傘をさす」の一連の動作に要する時間は1分ほどです。素早くツエルトを使う工夫や小技等、ツエルトの薀蓄を語らせたら長くなるので^^、それはまた別の機会に。

で、あなたのツェルト、「持っているだけで使ったことのないアイテム」になっていませんか?ツエルトは「簡易テント」として「張ろう」とするのが間違いの元、最初から「宿泊用ではない(※)」「かぶって使うもの」の割りきっておけば、利用の幅がぐっと広がります。

特にお勧めしたいのが、悪天時の休憩。雨風に打たれる場面では、雨具を着たまま行動食を口にする・・・ぐらいがせいぜいです。しかしツエルトを使えばコンロを焚いて暖かい飲み物や食べ物を摂取し、冷えきった体を温めたりも可能(引火や酸欠には十分注意が必要)。薄着で寒い場合はツエルトの中でウェアを着足すこともできます。

ただやはり、慣れていないと素早く効果的にツエルトを使えないのも事実です。だから「家でも山でも遊び感覚で練習」を薦めていたのですが・・・。

「まだツエルトを使ったことがない人」にお勧めしたいのが、こちら、『Em-Shelter I/ エム・シェルター』。

↓(メーカーサイトから)

初心者やご年配の方にとっては、逆にその「使い道の多さが仇」となって、身を守る準備が遅れ、重大な事態を招きかねません。緊急時に身を守る一番素早く確実な「かぶって座る」をいかに追求するかと言うことです。シンプルで誰でも使いやすいように、他の使い道はすべて切り捨てて「かぶって座る」のみに「特化」しました。このことにより、初心者やご年配の方でも「テクニックなし」に素早く身を守る準備ができるようになりました。


シンプル・イズ・ベスト、重さもわずか300g。ちょっとお高くはありますが、「非常時のお守り」のみならず、「雨の時、寒い時の休憩」にもどんどん積極的に使ってほしいですね。

私自身は、使いこなす自信もあるし、応用がきくのでツエルトを愛用していますが、これからツエルトを買おうと思っている方には、『Em-Shelter I/ エム・シェルター』をお勧めします。

詳しい仕様は公式サイトで:緊急だからこそシンプルな方がいい・・・That's it! Em-Shelter!!


(※)ツェルトを軽量化のための簡易テントとして使うのは、あまり意味がありません。もともと快適さについては全く考慮されていませんので、その目的であればシェルターが断然お勧めです。

ドキュメント生還-山岳遭難からの救出

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絶体絶命の状況に追い込まれた遭難者が、何を考えどう行動したのか。その結果として力尽きて死んでいく者と九死に一生を得る者との差はどこにあるのか。生きて帰ることのできた者は、どのようにして生をつなぎとめていたのか・・・・・・。

実際に遭難から生還した8つのケースを、事の起こりから命からがら救助されるまで、遭難者自身へのインタビューも交え、詳しく解説しています。

生と死を分けたもの・・・。ある人は「偶然もっていたお土産のマヨネーズ」であったり、「たまたま家族に知らせていた行動計画」であったりするわけですが、最終的には例外なく、「いたずらに動き回って体力を消耗するのではなく、一か所にとどまってジッと救助を待ったこと」が生還の決め手となっています。

遭難の前段階から決定的なラインを超えてしまうまでには、精神的なファクターも大きく関わってきます。そして、遭難状態に至るまで、さらにそこから救助されるまでの思考の過程は、当事者になってみなければ分かりません。そういう意味で、この本は登山をする方全てが知っておくべき、多くの示唆があります。

神々が宿る「魔の山」トムラウシ

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大雪山系のトムラウシ登山ツアーが遭難する様子を描いたフィクションです。

ただフィクションとはなっていますが、2009年のトムラウシ山大量遭難事故を下敷きに書かれていることは明らかで、事実を基にフィクションとして小説的技工を施した作品、といえるでしょう。遭難現場の描写は非常にリアルで、緻密な取材に基づいて書かれていることが伺えます。

で、この本を読んで「ツアー登山」についていろいろ考えさせられるところがありましたので、その点について少し述べてみたいと思います。

悪天につかまり次々と客が行動不能に陥っていく場面は非常にリアルですが、自分があの場面に客としていたとして、はたしてどんな行動をとれたでしょうか。個人で登っていたのであればツエルトを使い避難体勢を整えるでしょうが、18人パーティーでバタバタとメンバーが倒れていく中、そんな人達を差し置き一人でツエルト避難はできないことでしょう。

避難が出来ないのであれば1秒でも早く、1メートルでも下に下山すべきですが、パーティー行動をしている以上、団体としての行動を放棄しなければそれもできません。

私個人的としては同程度、あるいはそれ以上に厳しい気象条件の山も経験しており、もし個人もしくは少人数の登山であれば自分の身を守るための対処のしようもあったと思います。が、こういう大人数ツアー登山の中で個々のメンバーが生き残るための行動をとるのは非常に難しい。こういう場面ではガイドの危険回避の力量が非常に問われます。

実は私自身も、昔これと同様のツアー登山に作中の伊藤ガイドのような立場で加わっていたので、非常に考えさせられる内容が多々ありました。

社団法人日本山岳ガイド協会の事故特別委員会が調査・作成した「トムラウシ山遭難事故報告書も、ぜひ見てほしい内容です。


フェイスブックで男性救助 仙台・大東岳

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12日午前8時20分ごろ、仙台市太白区の大東岳(標高1366メートル)を登山中の男性が滑落し動けずにいるとの通報が宮城県警にあり、市消防ヘリが男性を同10時45分ごろ発見、救助した。男性が携帯電話で交流サイトのフェイスブック(FB)に位置情報などを書き込み、それを読んだ東京都在住の知人男性が通報した。県警仙台南署は「FBがきっかけの救助要請は珍しい。救助につながり良かった」と話している。
(毎日新聞 2014年4月12日付記事より引用)

登山中に滑落、行動不能になった登山者が、SNSのFacebookに投稿することで救助に繋がったそうです。

電波状況が不安定で電話できなかったためFBに投稿したとのことですが、思えば東関東大震災の際、電話での通信が困難になる中で通信手段として活躍したのが、同じソーシャルメディアのTwitter でした。技術的な面で電波状況が悪くても通信しやすいそうですが、スマートフォンが普及した現在、非常時の通信手段の1つとしてSNSも有効な手の1つになったと言えそうです。

とはいえ、何事も習熟していないと非常時に活用することは出来ませんので、アカウントを持っていない方は、まずFacebookやTwitterのアカウントを取り、身近な山仲間などとの交流を始めてみたらいかがでしょう。使い方そのものは全く難しい物ではなく、何より無料ですので、新しいもの嫌いな方も(実は私もその一人でした・・・)ぜひ「物は試し」に使ってみてほしいと思います。

たった一人の生還― 「たか号」漂流二十七日間の闘い

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遭難という極限状況に冷静に対処するには、『実際の極限状況の体験』が何よりも大切です。レスキュー隊員や自衛隊の救難隊員などの遭難対応のプロフェッショナル達は、まさに死と隣り合わせの壮絶過酷な訓練を日々積んでいます。

むろん我々一般人が実際に自分を極限状況に追い込むのは難しいですが、死の淵から実際に生還された方の貴重な手記を読み、疑似体験を積むことはできます。

この手記は海難事故による漂流体験を綴ったものですが、まさに壮絶の一言。書中に救助直後と近況の筆者の写真がありますが、その全く別人と言ってよいほどの姿の違いが、いかに過酷な体験だったかを雄弁に物語っています。

忘れてしまいたいであろう地獄の体験を、こうして書物に残して下さったことには感謝しなければなりません。

山岳遭難についての本ではありませんが、山に登る人はぜひ一読をお勧めしたい一冊です。

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